亀山 亮 写真展「メキシコ・日常の暴力と死」

亀山 亮 写真展「メキシコ・日常の暴力と死」

2021年 2月18日(木)〜 3月14日(日)15:00〜20:00
定休日:月・火・水
東京都中野区上高田5-47-8
スタジオ35分

*緊急事態宣言中により営業日・時間が変更されています。状況によっては変更もありえますので、SNS等確認してからご来場ください。ご来店の際は、マスクの着用と手指の消毒にご協力ください。

2021年最初の展示は、亀山 亮写真展「メキシコ・日常の暴力と死」を開催いたします。
スタジオ35分では2018年に新潟県にある人口50人足らずのマタギの村を撮影した写真展「山熊田 YAMAKUMATA」以来の2度目の展示となります。

今回の展示は亀山が長年にわたり取材しているメキシコのカルテルの抗争の影響下にある人々に迫った作品群を発表いたします。メキシコのカルテルは日本では遠い国の事として、ほとんどニュースになる事はなく、どちらかというと海外ドラマや映画などで知っている方が多いかと思います。

亀山は独自の方法でカルテルやその村に入り込み、そこで生活する人々や状況を撮影しています。亀山が瞬発的にとらえるモノクローム写真からは、その場の臭いや湿度などまで感じられ、その時の緊張感がびしびし伝わってきます。フィクションにはない現実がここにはあり、その一瞬にはメキシコの現状はもちろん、亀山亮の写真家としてのアティテュードが現れています。亀山亮、半端ないです。是非!

『メキシコ・日常の暴力と死。』

25年前、20歳の時土方で稼いだ1万ドルとフィルム二百本を大きなザックに入れて、もうしばらくは閉塞感を感じる日本には帰るつもりはないと、どこか悲壮感を持ちながら辿り着いたのがメキシコだった。

それ以後、カメラを持って中東やブラックアフリカの紛争地へ向かう旅が続くようになったがメキシコはぼくにとって第2の故郷のような存在だった。

メキシコを再び、また自分のテーマとして撮影するようになったのは2017年、仲間のジャーナリストが刑務所から6年ぶりに出てくるというので会いにいったのがきっかけだった。
久しぶりのメキシコはカルテルの抗争が国全体を支配して、暴力と死が人々の日常生活の中に当たり前のように浸透していた。
肥大したグローバリゼーションはメキシコの農民や労働者たちの脆弱な経済基盤を破壊した。
既に存在していたメキシコの格差社会が再拡大した結果、企業と政治とカルテルが三位一体となって弱肉強食の世界の中で暴力の支配者となった。
彼らの「超・個人的」な利益と「権力維持」の為だけに市井の人々を巻き込んだ低強度な内戦が続く。

NAFTA(北米自由貿易協定)によるメキシコから北米への関税撤廃によって近年は日本の自動車会社と関連企業も労働力が安いメキシコ国内に多くの工場を持つ。
中米からのアメリカを目指す移民の増加に連動して為政者は排外主義を増長させ意図的に人々を再び分断していく。
人は生まれた場所が違っただけで自動的に「収奪する側」と「搾取される側」に選別されてしまう。
資本主義が収奪と破壊を繰り返したこの数十年で人類が生態系や気候まで左右し、環境破壊や温暖化が顕在化した。メキシコの低強度の戦争は今の経済システムが破綻して欲望のドグマが暴発した結果でそれは翻って、日本に住んでいる自分たちにも深くつながっている問題だと感じる。

亀山 亮

1976年千葉県生まれ。現在、八丈島在住。
1996 年よりメキシコ、チアバス州のサパティスタ民族解放軍(先住民の権利獲得闘争)の支配地域や中南米の紛争地帯を撮影する。
2000 年パレスチナ自治区ラマラでインティファーダ(イスラエルの占領政策に対する民衆蜂起)を取材中にイスラエル国境警備隊が撃ったゴム弾により左目を失明する。
2003 年、パレスチナの写真集『INTIFADA』(自費出版)でさがみはら写真新人賞、コニカフォトプレミオ特別賞を受賞。2013年アフリカの紛争地帯を撮影した写真集『AFRIKA WAR JOURNAL』(リトルモア)で第32回土門拳賞を受賞。
その他にも『DAY OF STORM』(SLANT)、『戦場』(晶文社)などがある。2018年には写真集『山熊田』(夕書房)を刊行。
http://www.ryokameyama.com/