挑戦の版画家
一原有徳「今もネガの街」展
2019.6.12(水)〜6.29(土) 18:00〜23:00
定休:日・月・火
版画家・一原有徳(いちはら・ありのり)は1910年生まれ。2010年に100歳でその生涯を閉じました。 幼くして北海道に移住、1927年当時の逓信省小樽貯金局に入局、定年までの43年間勤務されました。一方、休暇を利用しながら登山家、俳人、文筆家として活躍、40歳を越えてから画家、版画家として活動を始めるという異色の経歴です。画業が美術評論家・土方定一の目にとまり、土方の推薦により1960年に東京画廊で初個展を開催、アンフォルメルの新星として注目をされました。その時の作品は東京都現代美術館に100点を超えるコレクションとなって収蔵されています。パレットがわりに使っていた石版石に美しい図像ができるのを紙に刷りとることから始めたモノタイプ作品、金属版によるさまざまな実験的な製版によって作成された金属凹版版画は一原独特の世界をうみだしました。その画面は時に「主観主義写真」に通じる造形美をあらわし、時にきわめて無機質な、時に詩的な姿をみせました。晩年まで旺盛な制作意欲は衰えることなく、日々工房から新たな作品が生み出されていました。その様子は生前撮影された記録映像をふくめ昨年5月にNHKの美術番組「日曜美術館」 で特集されました。一原の根底の意識は「人のやらないことをやる!」という挑戦精神でした。1988年に神奈川県立近代美術館(鎌倉別館)で回顧展「現代版画の鬼才 一原有徳の世界」が開催され、1998年には徳島県立近代美術館や北海道立近代美術館で回顧展「一原有徳・版の世界」が開催されました。小樽市立小樽美術館には一原有徳記念ホールが常設され、作品や資料が展示されている。挑戦の版画家・一原有徳の作品を紹介する美術館以外の個展は近年めったに開催されません。奇才・一原有徳の作品をこの機会にぜひご覧ください。