横田大輔 写真展 「植物、多摩川中流域」

横田大輔 写真展
植物、多摩川中流域


2025年11月19日(水)- 12月27日(土)
16:00 – 22:00
定休日:日・月・火
1drink order

スタジオ35分
東京都中野区上高田5-47-8


横田大輔は、常に独自の方法で写真という媒体に向き合ってきた作家である。
横田はこれまで、写真の複製や劣化といったプロセスを反復することで生じるイメージやフィルム、印画紙といった写真感材そのものを暗室で変質させる手法により、写真が変容していく過程そのものを作品化してきた。これらの作品は、写真表現における実験であると同時に、「写真とは何か」という媒体への根源的な問いを投げかけるものである。

一方で、近年横田が取り組むのは、多摩川中流域とそこに自生する植物を対象としたシリーズである。本作では大判カメラ(4×5)を用い、現地の風景と植物に直接向き合う撮影が行われている。なかでも、カラシナ(アブラナ科)の撮影を繰り返す姿勢には、日常的な雑草の存在を超えて、横田自身の知覚と視線が強く引き寄せられていることがうかがえる。それは「カメラで世界を見るとはどういうことか」という、視覚と写真の根本的な問題へと立ち戻る試みとも言えるだろう。

本作は、横田大輔の現在の制作における重要な局面を示すと同時に、今後の方向性を示唆するものである。


多摩川中流域に位置する是政橋周辺の河川敷。私はいつものポイントへと向かう。

草むらをかき分け、小川を一つ越えた中洲のような場所。ここには誰もこない。対岸には黙って糸を垂らす釣り人たちが等間隔に並んでいる。背後に広がる林の奥からは、野球少年たちの絶叫が聞こえてくる。空にはツバメが飛び交い、セッカは鳴きながら下降と上昇を繰り返す。そのさらに上空では、鷹がゆったりと旋回している。

私がここ多摩川で植物の観察を始めてから約一年。大きな出来事といえば特にないのだが、植物は私にいくつかの気づきを与えてくれた。そのほとんどは書き記すまでもない些細なことかもしれないが、経験のともなった理解は、私にとってはとても大切なものだ。

しかし悩ましい問題もある。観察することと、写真を撮ることがどうにもうまく交わらない。というのも、カメラという道具を手にした私は、観察を続けることが出来なくなってしまうほどに意識が散漫になってしまう。辺りを見る。対象を定め位置を探る。三脚の足を広げて、露出計で光量のチェック。風が止んだら、シャッターを切る。少し位置を変えて撮り直そうか、次の対象を探しに行こうか。もはや目の前の植物をじっくり観察している余裕などまったくない。

よく聞く話だが、写真は“見ること”の延長だという。しかし、どうにも私には写真によって見ることを奪われているのではないかと、そんな気がしてならない。今までは、特定の対象を撮り続けることは少なかったし、あえて明確にならないようにしてきた。それは見ていないという曖昧さの表明でもあった。だからこそ違和感を感じることはあまりなかった。

けれど、改めて観察の延長として写真を撮り始めると、私は一体どこに身を置くべきなのかと戸惑ってしまう。カメラは私の観察対象を横取りする。結局、私はカメラと対象を引き合わせるためだけの存在で、写真を撮る時、会話に混ざることができず黙って相槌を打つしかない、そんな居心地の悪い飲みの席を思い浮かべてしまう。

なぜそんな気分になってしまうのかといえば、私は、私の話をしたかったのだ。私の視線。私の存在。その痕跡をカメラを通して作品にしようとしていた。だからこそ私は特定の対象を見いだせてこなかった。しかし今は目の前に植物がいる。
カメラと植物。その二つの会合を黙って見守り、そこでなされたやり取りの記録を、後でこっそりと覗き見できればそれでいい。

横田大輔 / Daisuke Yokota

1983年、埼玉県生まれ。2010年 「第2回写真1_WALL 展」グランプリを受賞。 2016年、Foam Paul Huf Award、第45回(2019年度)「木村伊兵衛写真賞」を受賞。これまでに『垂乳根』(Session Press、2015)や『VERTIGO』(Newfave、2014)、『MATTER/BURN OUT』(artbeat Publisher、2016)など数多くの写真集を国内外で発表している。主な個展・グループ展に、Foam写真美術館「Site / Cloud」(2014)、「Matter」(2017)、「SHAPE OF LIGHT」(Tate Modern、2018)、「Painting the Night」(Centre Pompidou-Metz, 2018-2019)、「Photographs」(rin art association,高崎,2021)など。


Daisuke Yokota
Plants, Midstream Tama River


November 19 (Wed) – December 27 (Sat), 2025
Open: 16:00 – 22:00
Closed: Sun / Mon / Tue
1 drink order required

Studio 35 Minutes
5-47-8 Kamitakaida, Nakano-ku, Tokyo


Daisuke Yokota is an artist who has consistently approached the medium of photography through his own distinctive methods. In his earlier practice, Yokota produced works by subjecting photographs to repeated processes of reproduction and degradation, and by altering photographic materials such as film and photographic paper in the darkroom. Through these techniques, he made the very process of transformation inherent in photography into the core of his work. These works function not only as experiments in photographic expression, but also as fundamental inquiries into the medium itself: a sustained questioning of what photography is.

In contrast, Yokota’s recent series focuses on the midstream area of the Tama River and the wild plants that grow there. Using a large-format 4×5 camera, he engages directly with the landscape and vegetation of the site. In particular, his repeated photographing of wild mustard greens (Brassicaceae) suggests an intense and persistent attraction to what might otherwise be seen as a commonplace weed. This practice points toward a return to the essential question of photography and vision itself: what does it mean to look at the world through a camera?

Daisuke Yokota

Born in 1983, He won the Grand Prize at the 2nd 1_WALL Photography Competition in 2010. He also received the Foam Paul Huf Award in 2016 and the 45th Kimura Ihei Photography Award in 2019.
Daisuke Yokota has published numerous photo collections in various countries, including Tarachine (Session Press, 2015), VERTIGO (Newfave, 2014), and MATTER/BURN OUT (artbeat publishers, 2016).
His major solo and group exhibitions include Site / Cloud (2014) and Matter (2017) at the Foam photography museum, SHAPE OF LIGHT (Tate Modern, 2018), Painting the Night (Centre Pompidou-Metz, 2018 – 2019), and Photographs (rin art association, Takasaki,2021)