写真展 台風と秩序

写真展 「台風と秩序」

参加作家  上竹真菜美 百頭たけし 狩野川台風記録写真
企  画  若山満大

2018年10月17日(水) – 11月3日(土) 18:00 – 23:00
定休日 日・月・火

遺された60年前の記録からはじまる展覧会「台風と秩序」

60年前の9月27日、のちに「狩野川台風」と呼ばれる台風が日本に上陸。伊豆半島を中心に甚大な被害をもたらしました。本展は、この災害を記録した写真群と二人の写真家による展覧会です。狩野川台風が去った後、自治体やマスコミあるいは多くの個人によって、被災地の様子が撮影されました。その写真群は現在、狩野川資料館に保管されています。本展では資料館協力のもと、ここに保管された写真の一部を展示。現代において表現する写真家の営みとともに、その意味と意義について考えます。

途方もない量の土砂と瓦礫。人や家畜の亡骸。なぎ倒された稲穂の先に、削り取られた山が見える。台風一過のその中で、圧倒的な無秩序を記録した、圧倒的な量の写真が生まれました。その写真は「狩野川台風の被害記録」であると同時に、しかし、さまざまな読みの可能性にも開かれています。写真とその外部を新しくつなぎ直すために、私たちはまず目の前にある写真の集積を「使うこと」からスタートします。

本展に参加する二人の写真家、上竹真菜美と百頭たけし。上竹は福島の被災地、百頭は郊外の産廃集積場に赴き、フィールドを渉猟しながら写真を撮ります。或る場所や状況と自己の関係を写真という行為によって証明する彼らの営みは、台風一過に写真を撮った人々のマインドセットを想起させます。つまり、捉えどころのない「いま、ここ」と自分の関係性の証明することが、彼らにとっての写真なのです。60年の時間を超えて写真を撮る人の営みを交差させるために、あるいは、過去に起こった災害の記録と現代に生まれた写真表現を並置して双方の読みを複数化するために、本展は開催されます。

上竹の営み、百頭の営み、被災した名も知れぬ個人の営み。本展は、三者が出会う地平において写真を考えるささやかな試みなのです。

ーーーートークイベントーーーー

遺された物のつかいみち
登壇者  田附勝、百頭たけし、上竹真菜美、若山満大
開催日  10月27日(土)17:00 – 18:30
参加費  1000円(ワンドリンク付き)
定 員  先着15名  予約受付 35minutesonly@gmail.com

ーーーー関連企画ーーーー

Cliff Edge Project-水のかたりべ-
会  期  11月12日 (月) – 11月23日(金)
会  場  狩野川資料館(静岡県伊豆の国市墹之上467-2)
会期中無休 / 入場無料
開場時間  10:00 – 16:00
主  催  Cliff Edge Project

CLIFF EDGE PROJECT


問合わせ  cliffedgeproject@gmail.com

▽作家略歴

上竹真菜美 Manami Uetake
1988年鹿児島県生まれ。2018年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。2014年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。ロンドン芸術大学チェルシーカレッジMAファインアート交換留学(2015-16年)。主な個展として「Still Ongoing」(TAP Gallery、2016年)、グループ展として「ゆるんだ遠近法」(gallery COEXIST-TOKYO、2017年)などに参加。第17回「1_wall(写真)」ファイナリスト(2017年)

百頭たけし Takeshi Hyakutou
1980年群馬県生まれ。写真家。主な個展に「カイポンする」(2017年、コ本や)、「D 現場」(2016年、TAP Gallery)、「Busy, busy, busy」(2015年、TAP Gallery)などがある。グループ展として「PERSISTENCE」(2018年-、あをば荘ほか)「不純物と免疫」(2017年-、トーキョーアーツアンドスペース本郷ほか)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2017市街劇・百五〇年の孤独」(2017年-2018年、福島県いわき市内各所)、「Seize the Uncertain Day」(2017年、東京藝術大学美術館)などに参加。Gabriele Basilico Prize in Architecture and Landscape Photographyノミネート(2015年)。

狩野川台風記録写真 Reports of Typhoon “Ida”
1958年(昭和33年)9月27日に神奈川県に上陸し、伊豆半島と関東地方に大きな被害を与えた台風。発生当初「台風第22号」と呼ばれたこの台風は、伊豆半島の狩野川流域に大規模な被害を与えたことから、1958年11月気象庁によって「狩野川台風」と命名された。これは公式に台風に名称が与えられた最初の事例である。死者・行方不明者1,269名、住家の全半壊・流出16,743戸、住家の床上・床下浸水521,715戸。この台風の後、災害救助法や宅地造成等規制法などの法整備、被害地域の治水工事が進められ、現代の災害対策の基盤となっている。本展では、公的機関および個人が撮影・保全してきた災害記録写真を展示する。

▽企画者略歴
若山満大 Mitsuhiro Wakayama
1990年岐阜県養老町生まれ。キュレーター。アーツ前橋学芸員。2015年神戸大学大学院人間発達環境学研究科修了。愛知県美術館学芸員、あいちトリエンナーレ2016コーディネーターを経て現職。専攻は日本写真史、近現代美術史。主な企画展として「写真的曖昧 The blur in photographs」(2018年、金沢アートグミ)、「不純物と免疫 Impurity / Immunity」(長谷川新との共同企画、2017年-、TOKAS本郷ほか)などがある。

スタジオ35分 中野区上高田5−47−8

協  力  Cliff Edge Project      国土交通省中部整備局・沼津河川国道事務所河川管理課
熊谷篤史